シリーズ名:2007年全日本選手権フォーミュラ・ニッポン(FN)
大会名:第3戦・ツインリンクもてぎ
距離:4.801km×62周
予選:5月19日 晴れ時々曇り、一時雨・観衆: 6,200人(主催者発表)
決勝:5月20日 晴れ        ・観衆:19,000人(  同  )

3番手スタートの小暮が、2ストップ作戦を完璧に遂行し今季初優勝
後方からジャンプアップを目指したロイックは、惜しくもリタイア

31 Loic DUVAL

予選7位 決勝リタイア

32 小暮卓史 予選3位 決勝1位
今回の予選2回目は1台ずつタイムアタック。コースを存分に使える代わりに、天候の変化は時の運となる。
決勝は2ストップ作戦が功を奏し、小暮選手の完勝となる!

同じく2ストップ作戦で臨んだロイック選手は、2周目の90度コーナーでオーバーラングラベルに捕まりリタイア。

3年ぶりの優勝を飾った小暮選手。

 コンピュータによるシミュレーションでは、2ストップ作戦がベストと分かっていた。だが、これまでに何度もチャレンジしながら果たせないでいた。やはり実際のレースとは別物か? そんなジレンマを吹き飛ばすように小暮卓史が快走、3年ぶりとなるトップチェッカーを受けた。レース中のベストラップでもライバルを圧倒。まさに完勝だった。
 国内トップフォーミュラとして、長い歴史と根強いファンを持つ全日本選手権フォーミュラ・ニッポン(FN)。その07年シーズン第3戦が栃木県茂木町にあるツインリンクもてぎで開催された。快晴に恵まれた決勝当日は2万人近いファンが詰めかけて、トップドライバー/チームが覇を競うハイスピードバトルと戦略の妙に酔いしれることとなった。
 5月18日(金曜)の合同テスト(公式練習)からレースウィークが始まった。完全ドライのコンディションで午前と午後、それぞれ1時間ずつの走行セッションが設けられていたこの日、小暮は両セッションでともに3番手のタイムをマーク。ロイックは10番手に留まったが、ユーズドタイヤではフィーリングも悪くないようで、まずまずの好発進となった。
 19日(土曜)には公式予選が行われた。通常なら45分間×2セッションのベストタイム順にグリッドが決定されるのだが、今回は新しいスタイルが導入された。それはスペシャルステージと呼ばれる午後のシングルカーアタック。午前中のセッションでマークしたタイムの遅い方から順に1台ずつタイムアタックするのだ。これならトラフィック(遅いマシン)に邪魔されることはないが、反対に、全22台が1台ずつアタックすることで、気温や路面温度さらには天候などが変化していくことも考えられた。
 先ずは午前中の1回目。セッション開始前から小雨がパラつき始めてハーフウェットの路面でスタート。ほとんどのマシンがドライタイヤでコースインしていくが、雨足が少し強くなり、やがて完全なウェットに。だがセッション中盤には雨も上がり、コースはドライコンディションに、と目まぐるしくコンディションが変化していった。
 その影響か、何度か赤旗中断となるハプニングもあった。最初の赤旗中断後、一気に1分38秒台に入れた小暮は、3セット目のニュータイヤに履き替えてアタック、セクター1ではベストタイムを更新する速さを見せたが、オーバースピードからS字でスピン。これで2度目の赤旗が提示され、小暮は以後、アタックできなくなってしまった。
 この赤旗中断からセッションが再開されると、ロイックは3セット目のニュータイヤに履き替えてアタック。セクター1からセクター3までベストタイムを更新。好ラップが期待されたもののコントロールラインを通過する直前に再度の赤旗中断。残り3分間での逆転を狙うが、ここも黄旗で果たせず。2人揃って気紛れな天候に翻弄され、ロイックが1分37秒353で9番手。セッション後半走れなかった小暮は38秒028で18番手に留まることになった。
 ただしこれはあくまでも、午後のセッションの出走順。シングルカーアタックでの一発大逆転もあり得る、と気持ちを切り替えて臨んだスペシャルステージも気紛れな天候に翻弄されることになった。数人がアタックした辺りから、東コースでは雨がパラつき始めたのだ。だが幸いにも本降りとなるまでにはいたらず、その後天候は持ち直し、セッション後半にアタックしたドライバーは、ほぼドライコンディションでのアタックとなった。
  5番手スタートとなった小暮は、パラつき始めた雨でコースが濡れていたにもかかわらず、セクター1からベストタイムを続け、1分35秒194と、この時点でのトップタイムをマークする。その後、天候が持ち直して来るに従って各車のペースも上がってくるが、小暮のタイムを更新するドライバーは現れない。
  14番目にアタックしたロイックも、小暮のタイムを更新するには至らなかった。それほどまでに小暮のアタックはスーパーラップだったのだ。だが、セッションも終盤に来て路面は完全なドライコンディションとなり、結果的に小暮は3番手から、ロイックは7番手から、日曜日の決勝に臨むこととなった。
20日(日曜)は、雲ひとつない、文字通りの五月晴れとなった。午前8時半から行われたフリー走行で小暮は、2番手以下に1.2秒余りの大差をつけるトップタイムをマーク。少しオーバーステアが残っていたと言うロイックも、2位に僅差の5番手で、ファンの間では午後の決勝に期待が高まっていった。

だがその時ピットでは中嶋悟総監督以下チーム首脳とエンジニア&ドライバーがミーティングを続け、決勝での2ピット作戦を決断していた。
 決勝レースは午後2時半にフォーメーションラップのスタートが切られた。隊列を組んだまま22台のマシンが1周回ってきて正規のスタートとなる。このスタートでは余り大きな順位変動もなく、各車ポジションキープしたまま2コーナーを立ち上がっていく。朝のフリー走行で、軽い状態でのマシンのフィーリングを確認していた小暮は、1周目から仕掛けに掛かる。ダウンヒルストレートの終わり、90度コーナーへのアプローチで1台をパスして2位に進出。続く2周目にも、同じポイントで1台をパスしてトップに立つと、まさに脱兎のごとく逃げ急いだ。
  トップに立った直後の3周目には、この時点でのベストラップとなる1分39秒188をマーク。その後も39秒台をコンスタントにマークしながら先を急いだ小暮は、10周で14秒、20周で30秒近くまで2位を引き離す韋駄天ぶりだった。
28周を終えたところで小暮はルーティンのピットイン。ガソリン補給とタイヤ交換を終えると4番手でピットアウトしていくが、そのラップタイムは、ライバルに比べてコンスタントに1秒以上も速く、完全なブッチギリ。
 その後も38秒台後半から39秒台前半でコンスタントにラップを重ねていった小暮は、39周目には、このレースのファステストラップとなる1分38秒785をマークしている。こうして、後続との差を見る見る引き離していった小暮は、2位に50秒余り差を付けた43周目に2度目のルーティンピットを行うが、それまでの“貯金”がモノをいいトップをキープしたままピットアウト。
 こうなると、もう他のドライバーには手がつけられない。その後も1分39秒台前半をコンスタントにマークして逃げた小暮は、我がチームでFN2シーズン目を迎えた04年開幕戦の鈴鹿以来3年ぶり、自身にとって通算2勝目となる嬉しい今季初優勝を飾った。チームにとっても待望の今季初優勝だった。
 一方、7番手からスタートし、小暮と同じ作戦で上位進出を目指していたロイックだったが、やはり小暮と同様スタート直後から仕掛けに入った。オープニングラップにひとつポジションをアップしたロイックは、2周目の90度コーナーで前を行くマシンにブレーキングで何とか前に出たものの、これは僅かにオーバースピード。ブレーキングで姿勢を乱し、そのままオーバーラン。グラベルに捕まり万事休す。
1-2フィニッシュの可能性さえあったレースを、早々に終えることになった。

■PIAA NAKAJIMA RACING総監督中嶋悟のコメント

「これまで課題だった予選の速さも少しずつ上がってきました。予選で2列目に並ぶことが出来たことも、今回の大きな勝因でしたね。レース距離=300kmを走る上での理想として『2ピット作戦』は、以前から何度もトライしてきました。でも、前を行くマシンを抜くのにロスしたり、と何度やっても上手く行きませんでした。でも、今回は小暮が成し遂げてくれました。プラン通りにドライブしてくれたドライバーやスタッフに感謝しています」

次戦は6月9−10日岡山国際サーキットで開催されます。



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