<シリーズ名>2009年全日本選手権フォーミュラ・ニッポン(FN)
<大会名>第7戦・オートポリス
<距離>4.674km×54周
<予選>8月29日 曇り時々晴れ・観客動員数 6,234名(主催者発表)
<決勝>8月30日 曇りのち晴れ・観客動員数 11,630名(主催者発表)

ロイックが待望のドライバーズチャンピオンを獲得
小暮が2勝目を飾り、チームタイトルも確定

31 Loic DUVAL

予選 10位 決勝3位

32 小暮卓史 予選1位 決勝1位
自身のコースレコードを1秒近く縮めて、ポールを獲得した小暮選手

ロイック選手は、オフィシャルの判定ミスもあり、後味の悪い予選となる。

ポールの小暮選手は慎重になり過ぎたか、スタートで2台に先行される。
ロイック選手は、1コーナーで接触し、最後尾となる。

しかし、終わってみれば小暮選手はポールtoウイン。
ロイック選手は3位となり、チーム&ドライバーのWタイトルを決めた。

 悪夢の予選を乗り越え、ロイック・デュバルが最終戦を待たずにドライバーズチャンピオンを獲得。さらに小暮がポールtoフィニッシュでチームチャンピオンも獲得。週末のオートポリスは「NAKAJIMA RACING」を中心とした劇的なドラマが展開された。
 レースウィーク最初のセッションとなる土曜日のフリー走行で、NAKAJIMA RACINGの2台は、ロイックがトップタイム、小暮が僅差で2位といつも通りの位置につけた。
 しかし午後の予選から、ここまでのNAKAJIMA RACINGの独走状態に待ったをかけるドライバーが現れ始める。Q1で2台は、いつもどおりにまずは中古タイヤでアタック、タイミングモニターの1、2番手に名を連ねる。残り時間もわずかになり、2人のタイムを上回るドライバーが登場すると、それぞれ新品タイヤに履き換え、再びアタック開始。しかし、ロイックは100分の8秒、小暮にいたっては僅か1000分の1秒差でトップタイムを上回れず、久々に1-2を逃した形になった。
 気を取り直してのQ2で、小暮はトップタイムをマーク、ロイックも100分の2秒差で2位につけ、再び1-2体制としてQ3へと進出。Q3でも小暮は目の覚めるようなアタックを見せ、2006年に自身の記録したコースレコードを1秒近く縮めて3戦連続のポールポジションを獲得した。
  一方のロイックは、Q2で小暮に競り負けた100分の2秒を取り返そうと勢いのあるアタックを見せ、途中まで小暮のタイムを上回るペースで走行していたが、コース中盤の右コーナーで攻めすぎたか、コースオフしタイヤバリアにヒット。マシンを大きく破損しアタック続行不可能となった。
 ロイックにはさらに不運が重なる。Q2を小暮に続く2位で通過したロイックだったが、このタイムが黄旗掲示中のタイムで無効扱いになる。本来Q3に進出できなかったはずが、オフィシャルの判断ミスによりQ3には出走。予選後、長い協議の末、結局Q2のセカンドタイムが正式予選タイムとなり、10番手グリッドとなってしまう。

 後味の悪い予選を終え、一夜明けた決勝日。チームスタッフが懸命の作業で修復したロイックのマシンはフリー走行で4番手のタイムをマーク、小暮も6番手と「そこそこ」の順位を得る。このフリー走行では各車の燃料搭載量もまちまちで、順位がそのままマシンやチームの調子につながるわけではない。事実、小暮もロイックもマシンの調子には満足の様子で、小暮はポールtoウィンを、ロイックは後方からの追い上げを誓っていた。

 日差しも強くなり始めた午後2時30分、54周の戦いの火ぶたが切って落とされた。小暮とロイックは、燃料を多めに積んでのスタート。後の記者会見で「いつもどおり」と中嶋悟総監督が苦笑いしたように、小暮はスタートのタイミングを逃し伊沢選手、ロッテラー選手に先行され、3位に後退。
  一方のロイックは好スタートを決めたものの7番手スタートのリチャード・ライアン選手と1コーナーでサイド・バイ・サイドの状態に。スタート直後の団子状態の中、行き場をなくしたロイックはリチャード選手に押し出される形でタイヤをグラベルに落としてしまう。なんとかコースアウトは免れたものの、最後尾まで順位を落とすことになった。
 3位を走行していた小暮は2位を猛追していたが、もともとオートポリスはタイヤに厳しいサーキットなうえに、スタート時には47℃まで上昇していた路面温度も影響し、タイムが安定しない。小暮と無線でやりとりを重ねたチームは、ライバル達より少し早めにピットイン。16秒1という作業時間でコースに復帰した。チームが判断した早めのピットイン作戦とスタッフの完璧なピット作業で、序盤に小暮の前を走っていた2位のロッテラー選手のマシンをピット作業で追い抜きに成功、さらに運も味方につけたか、トップを走っていた伊沢選手のマシンがピット作業に手間取り、これも追い抜きに成功した。
  全車がピット作業を終えた時点で小暮の前には1台大嶋選手のマシンが残っていたが、そのマシンは2回ピット作戦をとっており、35周目にはついに小暮がトップへ返り咲く。タイヤも履き換えペースをつかんだ小暮は、レース前半とは別人のようにタイムを上げていく。レース終盤には1分36秒台のタイムを連発。最後まで手を緩めずにプッシュした小暮がポールtoフィニッシュを飾った。
  これにより、最終戦を待たずに7年ぶりのNAKAJIMA RACINGのチームチャンピオンが確定した。
 一方、最後尾に後退したロイックにも奇跡のドラマが待っていた。
  ロイックもタイヤの厳しさを感じており、小暮よりも早めにピットイン、こちらもスタッフが完璧な作業で送り出すと、全車がピット作業を終えた段階で5位まで浮上した。早めのピット作戦で追い抜いたマシンの中には、チャンピオンを争うブノワ・トレルイエ選手の姿も。実はブノワ選手はピット作業時のアクシデントで大きなタイムロスがあり、コースに復帰した時には最後尾まで後退していたのだ。前戦まででブノワ選手に対し6ポイント差をつけているロイックは、今回のレースでブノワ選手をさらに5ポイント引き離せばタイトルを獲得でき、ロイックはもう一つポジションを上げて4位に入れば最終戦を待たずにチャンピオン確定となる。
  懸命に前を追いかけていたロイックだったが、この後2回ピット作戦をとっていたマシンが2台ピットへ戻ったことで、4位どころか表彰台圏内の3位までポジションを上げた。一時は後続のマシンに追い立てられる場面もあったが、抜きどころとなる要所で的確に相手を抑えきったロイックは3位でチェッカーを受け、今シーズンのドライバーズチャンピオンを確定した。
 2002年以来、実に7年ぶりのダブルタイトルを獲得したNAKAJIMA RACINGは、「年間王者」として1ヵ月後の最終戦・菅生に臨むことになった。

■ NAKAJIMA RACING総監督中嶋悟のコメント
 スタートでそれぞれがポジションを落とすことになり、いつものパターンかなという心配があったんですが、小暮選手に関しては前回のもてぎで学習して、スタートを失敗した時の計算でガソリンを積んでいたので、ついて行ってくれてさえいれば、あとはピットワークで逆転ができるであろうという自信はありました。 ただ1台ぐらいかと思ったら2台に抜かれたもので、ちょっと伊沢君とのギャップに関しては心配はしたんですが、非常にうまく事が運んだということですね。
 ロイックに関してはもっと刺激的で、まさか一番後ろで帰ってくるとは思っていませんでしたから、ここはクリアな場所で走れるようにと早めにピットインを行いました。これが本当にうまく働いてくれて、前にいた人も2ストップでしたから、レース中も邪魔されることなく良いペースで走れました。とにかくいろんなことがあって、昨日はさびしい思いもしたんですが、それを挽回してくれたドライバー二人が最高の仕事をしてくれたと思っています。


次戦は9月26-27日宮城県スポーツランド菅生で開催されます。



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