シリーズ名:2004年全日本GT選手権(JGTC) |
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松田/ロッテラーの2年目コンビが粘り強く走って10位入賞
ハンディを抱えながらも総力戦で、中盤戦ではトップを快走 |
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開幕戦のTIサーキットには6万人近い観客が訪れた。 | 日曜日は4月とは思えぬ寒さとなる。 |
日曜日、決勝スタート直前まで路面はウエット。 |
スタートドライバーのロッテラー選手はレインタイヤで前半の予定周回を走りきる。 |
4月3日〜4日、岡山県にあるTIサーキット英田では、待ちに待った2004年全日本GT選手権(JGTC)が開幕した。公開練習日となった金曜日にはシーズンを闘う主役が勢揃い。 土曜日の公式予選からはサーキットに詰めかけるファンも一気に増え、不順な天候の中、決勝レースが行われた日曜日には、何とこれまでの記録を更新する5万8500人を数えるなど、JGTCの高い人気は相変わらずで久々のJGTCバトルを心行くまで楽しんでいた。 今シーズンの我がチームはタイトルスポンサーが変更となり、チーム名称もEPSON NAKAJIMA RACINGに一新した。 もちろん、使用するマシンは最新の04年モデルだが、これまで使い慣れたNSXの最新仕様にバージョンアップ。 この最新仕様ではエンジンが、ターボを使って一層チューンが高められていたから、チームの期待は大きく膨らむことになった。ただし、マシンの開発には予想していた以上に時間が必要。シリーズ序盤戦では苦戦も予想されていた。 マシン以外のチームパッケージングは、松田次生とアンドレ・ロッテラー両選手がチームに残留し、2年目のコンビでシーズンに臨む。彼らをサポートする体制にも一切変更はない。 金曜日の公開練習が始まると、NSXの置かれた立場が一層明確になった。 シーズンオフにコース改修工事が実施されたTIサーキットでは、各カテゴリーで大きくタイムアップ。 我がEPSON NSXも、公式予選ではタイムアタックを任されたロッテラーが奮闘。 これまでのコースレコードを更新する1分24秒555をマークしたものの、それでもグリッドは6列目に止まってしまうほどだった。そうした状況の中、中嶋悟総監督や藤井一三テクニカルディレクターを初めとするチーム首脳はミーティングを行い、日曜日の決勝レースでは総力戦で、ひとつでも上位のポジションでゴールするための策を練ることになった。 折から、土曜日の予選終了後には雨が落ち始め、天気予報は日曜午前中の雨を告げていた。 果たして、日曜日朝のフリー走行は小雨/完全ウェットのコンディションとなる。 チームスタッフは手早くセットを変更し、このセッションでは5番手タイムをマーク。しかも決勝までには雨も止むだろうとの新しい気象予測も伝わってきた。タイヤの選択など、エンジニアが頭を悩ます要素が増えれば増えるほど、チーム総力戦の様相が増してくるから、マシンの速さにハンディを抱える現状では、このコンディションは"願ったり"だった。 決勝スタート時、雨は完全に止み、晴れ間も少し見えていたものの、コースはまだまだウェットコンディション。 グリッド上で直前まで待って、やはりインターミディエイト(ハーフウェット・コンディション用のタイヤ)でスタートする作戦に決める。 天気の流れから行けば、スリック(ドライ・コンディション用のタイヤ)でスタートする作戦も考えられたが、コース北半分、攻略の上で重要となるモスSカーブやアトウッド・カーブではウェット・コンディションが酷く、スリックでのスタートでは少しリスクが大き過ぎる、との判断だった。 GT500クラスのマシンはスリックとインターミディエイトが半分半分の状況でスタートすることになった。これはチーム個々の判断でスリックならば事前に登録しておいたタイヤを履くしかないが、インターミディエイトに関して言うなら、溝の深さで浅ミゾと深ミゾを選択出来る。我がチームでは浅ミゾのものを選んだ。つまり、よりドライ用のスリックに近い選択だったが、それが"大正解"となる。 サポートレースが何度も赤旗で中断された影響もあって、予定より15分遅れてのスタートとなり、しかも安全性を確保する目的でセーフティカースタートとなり、4周のローリングラップを経てバトルが開始された。 このバトル開始と同時に、上位集団には混乱が生じたが、スターティングドライバーを担当したロッテラーが、的確なドライビングでこれを回避。 1周回ってくる間には何と8番手まで、一気に5つもポジションをアップさせてきた。 タイヤ選択の妙もさることながら、ロッテラーのドライビングも称賛に値するものだった。 その後レースは、少なくとも表面上は小康状態となるが、まだまだ滑りやすい路面と格闘を続けていたドライバーにとっては、一瞬なりとも気の抜けない展開だったに違いない。 やがて、周回が進むに連れてコースコンディションが良くなっていき、まずはライン上がドライコンディションとなり、やがては完全なドライとなるのだが、この頃、10周を過ぎた辺りからタイヤを交換にピットインしてくるマシンが増えた。 これはスリックタイヤの方が有利になった、との判断だったようだが、我がチームではロッテラーをそのまま走行させた。GTレースでは、いずれルーティンのピットインが義務づけられており、その際にタイヤも交換するから、余計なロスタイムは無駄、との判断だ。 もちろん、完全なドライコンディションではインターミディエイト・タイヤでは厳しいところだったが、それでもロッテラーは可能な限りプッシュを続け、22周目には何とトップに立つことに成功する。 タイヤの面からだけなら、一気にペースの落ちた27周目辺りでのピットインも考えられたが、燃費との兼ね合いもあり、ロッテラーは30周まで引っ張ってようやくピットイン。 彼の頑張りに対してチームスタッフが素早い作業でこれに応える。ガソリン補給とタイヤ交換、そしてロッテラーと交替した松田は、最小限のタイムロスでピットアウトしていく。 ここから先は松田の、我慢の走行が続く。レース作戦の上から50周を越えるためガソリンは満タン。 終盤にはタイヤが厳しくなってくるが、最後の最後までノーミスでプッシュし続け、10位でチェッカーを受けたのだ。僅か1ポイントだが、これはチームの総力戦で奪ったもの。 今後、マシンが熟成されたときに、必ずや貴重な1ポイントとなるはずだ。 |
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●EPSON NAKAJIMA
RACING総監督 中嶋悟のコメント 最新仕様のマシンを投入しながらも、そのマシンのデビュー戦となった今回は、マシ ンの速さでライバルに後れを取ってしまいました。10位という結果自体は、決して満足 できるものではありませんが、チームの総力を挙げて1ポイントをもぎ取ることが出来 ました。 これからは陣営内で協力し合ってマシンの速さを確保できるよう努力を続け、 必ずやトップを争うまでになりたいと思っています。 皆様には、これまで同様に、我が EPSON NAKAJIMA RACINGに、ご声援いただけるよう、よろしくお 願いします。 |
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※次戦は、5月21日〜23日、スポーツランド菅生で開催されます | |