シリーズ名:2004年全日本選手権フォーミュラ・ニッポン(FN) |
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小暮が逃げ切りで嬉しい初優勝を飾る
ロッテラーも2位で続き、チームは8年ぶり2度目の1-2フィニッシュ |
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公式練習からマシントラブルに苦しんだロッテラー選手、 決勝もピットスタートとなるが、結果は2位まで浮上。 |
04年からレギュレーション変更によりピット作業員は7名に減り 同時に4本のタイヤ交換は不可能に。 2本だけのタイヤ交換でタイム短縮の作戦が好結果となる。 |
トップ争いのサイドbyサイドの戦いにピット内は盛り上がる。 |
開幕戦を見事ワンツーフィニッシュで決めた。
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多くのモータースポーツ・ファンが待ち焦がれていた2004年シーズンの全日本選手権フォーミュラ・ニッポン(FN)が、先週末、いよいよ開幕を迎えた。オープニングラウンドの舞台は、国内におけるモータースポーツの聖地、鈴鹿サーキット。 例年同様、2輪レースの国内最高峰、全日本ロードレース選手権の開幕戦と併催される鈴鹿2&4レースとあって、4輪レースファンに加えて2輪レースファンも繰り出すことになり、また春休み中ということも手伝ってスタンドは満杯。 週末の2日間で、観客動員は5万人を大きく越えることになった。 昨年、FNは『新世代誕生・革命宣言!』をキャッチフレーズに掲げ、我がPIAA NAKAJIMA RACINGも、それに呼応する格好でドライバーを一新していたが、今シーズンはその2人、アンドレ・ロッテラーと小暮卓史の両選手が揃って残留。2シーズン目となる今年は開幕から全戦でトップを狙う作戦で、3月上旬に開催した体制発表会の席上で中嶋悟総監督も「2人合わせて5勝がノルマ」と高い目標を表明していた。 チームのパッケージングも昨年と全く同じで、新しいシーズンにありがちな初期トラブルやコミュニケーション不足とは、全く無縁。開幕前に実施された2回の公式合同テストでは、2人揃って安定した速さを発揮していたから、チャンピオンナンバーの奪回に向け、チームの士気はいやが上にも高まった状態での開幕となった。 昨年と同様に、今シーズンもFNのレーススケジュールは金曜日から。 今回は午前10時40分からと午後3時から、それぞれ1時間ずつの2セッションが用意されていた。 ここでの最大の目的はマシンのフィーリングをチェックして予選や決勝に向けてのベストセットを追求することで、タイム自体は余り意味をなさない。 我がチームでは、さらに決勝での秘策を成功させるために、データ収集も今回の大きなテーマとなっていた。 その走行セッションで、小暮選手は順調にメニューを消化していくが、ロッテラー選手のマシンには、2回目のセッション開始早々トラブルが発生。スタッフが修復に当たったものの時間切れとなってこの日の内には確認のための走行ができず、不安感を持って予選を迎えることになった。 土曜日の公式予選は午前10時35分からと午後3時5分から。 いずれも45分間のセッションが2回行われるが、やはり勝負所は2回目のラスト10分。この日は早朝から快晴に恵まれ、午後のセッションでは路面温度が上昇しすぎることも予想されたから、1回目のセッションからフルアタックに掛かるチームも見受けられたが、我がチームは午後のセッションをメインに考えていた。 実際、小暮選手は1回目のセッションで1分44秒878で6番手に付けると、午後の2回目には44秒195まで詰め、ポールの井出有治選手とは0.04秒差の3番手と、まずまずの結果に終わっている。 だがロッテラー選手の方は、またも不運に泣かされることになる。1回目のセッションでまずまずの感触を得ていながらも、2回目のセッションが始まると早々にエンジントラブルに見舞われてしまう。しかも、決勝スタート直前になって、今度はコンピュータにトラブルが発生し、その修復もあってピットスタートを余儀なくされるなど、彼にとって04年シーズンの開幕は、悪夢の週末となるか、にも思われた…。 決勝レースが行われる日曜日は、早朝から青空が拡がる快晴に恵まれた。 大盛況のピットウォーク終了後、全日本ロードレース選手権の開幕戦を挟んで、午後2時からFN開幕戦のスタート進行となり、午後2時39分に正式スタート。いよいよFNバトルが始まった。 ポールポジションからスタートした井出選手が好ダッシュを決め、セカンドポジションから、少し出遅れた格好のB.トレルイエ選手との間に割って入る格好で、予選4番手からこれも絶妙のスタートを切った土屋武士選手が続く。3番手スタートの小暮選手はホイールスピンさせ過ぎてしまい、5番手のグリッドからスタートした松田次生選手にもかわされ、5番手までポジションダウンしてしまったが、そこから彼の猛プッシュが 一方、ピットスタートとなったロッテラー選手は、1周目から猛プッシュ。すぐに12番手まで進出したが、前方にペースの上がらない集団が現れた8周目には早くもピットイン。 ガソリン補給とタイヤ交換を行ったが、交換したタイヤはフロントの2本のみ。 11.8秒のタイムロスのみで戦列に復帰、目の前を遮るマシンはなく、トップグループと同等のハイペースで先を急いだ。 この時はそれほど注目を集めることもなかったが、実は『タイヤ2本交換』が今回、我がチームが考え出した秘策で、それが予想以上の好結果を呼ぶことになる。 上位陣の中では松田選手が12周目にルーティンのピットインを行うが、それが引き金となったかのように上位陣が続々ピットに向かう。彼らの、平均的なロスタイム(静止時間)は20秒少々だったが、15周を終えたところでピットインした小暮選手は右の前後輪、2本のタイヤを交換しただけで、12.6秒のロスタイムでピットアウト。 ライバルに比べて7〜10秒も素早く、ここに来て我がチームの戦略に、ライバルのピットが慌ただしくなっていった。 素早いピットイン、という戦略の結果、レースも後半を迎えたところでのオーダーは、未だピットインしていない服部尚貴選手がトップ。 2番手に小暮選手が付け、後方から井出選手がじわじわと差を詰めてくる展開となる。 さらにピットスタートだったロッテラー選手もポイント圏内の6番手まで進出していたから、そのタイミングだけでなく作業内容まで含めたピット戦略の重要性と、そこから生まれるFNの奥の深い面白さが証明された格好だ。 ただし小暮選手が、タイヤを2本しか交換していない分だけ井出選手に対してビハインドを背負っていたから、2台のタイム差がじわじわと詰まってきていたのも、また事実だった。 そんな状況で攻防戦を繰り広げながら、小暮選手と井出選手は、タイヤ無交換のまま走り続ける服部選手に見る見る近づいていく。 そして33周目、シケインへのアプローチで3台がテールtoノーズとなり、小暮選手がアウトから、井出選手はインから、ほぼ同時に服部選手をパスしに掛かった。シケインのスタンドを埋めたファンからは歓声が舞い、喝采の嵐となる中、2台は服部選手をかわし、なおも激しいトップ争いのドッグファイトが続いた。 そんなトップ争いが、大きく動いたのは42周目のヘアピン。井出選手が痺れを切らしたかのように、ノーズをインに射し込んできたが、これには無理があった。 2台は接触し、井出選手はノーズを壊してしまう。だが、幸いなことに小暮選手のマシンには致命的なダメージはなく、そのまま走行を続けることが出来た。 さらに、今度は土屋選手が小暮選手に猛プッシュを仕掛けてきたが、レースも大詰めとなる43周目のシケイン立ち上がりで、勝負を焦ったか土屋選手もスピンで自滅。これで小暮選手のトップは安泰となり、何とロッテラー選手も2位に進出することになった。 ラスト3ラップ。ロッテラー選手の後方からは道上龍選手が猛チャージを掛けてきたが、ロッテラー選手もこれを凌ぎ、トップチェッカーを受けた小暮選手の1.2秒後に2位でゴール。 チームにとっては、96年の第5戦・鈴鹿以来となる、8年ぶり2度目の1-2フィニッシュで、上々の開幕ダッシュを飾ることになった。 |
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■PIAA NAKAJIMA RACING総監督中嶋悟のコメント |
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※次戦は、4月30日〜5月2日、宮城県スポーツランド菅生で開催されます | |