シリーズ名:2009 オートバックス SUPER GT(S-GT)
大会名:開幕戦・岡山GT300km
距離:3.703km×82周
予選:3月21日 晴れ   ・観衆:1万0500人(主催者発表)
決勝:3月22日 曇り時々雨・観衆:2万3000人(  同  )

雨の中、着実に追い上げて7位入賞
32 EPSON NSX  予選11位 決勝7位
開幕戦は岡山国際サーキット。2ディ開催となったスーパーGT。土曜日は好天だったが、決勝は重い雲に覆われ完全なウエット。
スタート時は雨足も酷く、SCスタートとなる。スタート担当はベテラン・ロイック選手。
ほぼ3分の2のロングラップを引っ張り、中山選手に交代。 ルーキー中山選手は、タイヤ無交換のまま安定したラップを刻み、7位フィニッシュ。デビュー戦を無事に終えた。
“最速のハコ車レース”として国内最大の観客動員を誇るとともに、世界的にも認知度が高まっているオートバックス SUPER GT(S-GT)シリーズの第1戦が、先週末に岡山国際サーキットで開催され、昨年同様に、他の国内メジャーレースシリーズに先駆けて09年シーズンの幕が開いた。決勝当日は生憎の雨に見舞われたが、2万3000人ものファンがサーキットに詰めかけ、待ちわびていたシーズン開幕を、心行くまで楽しんでいた。
 今シーズンもまた、我がチームはEPSON NAKAJIMA RACINGとしての参戦。ドライバーは、今年で4シーズン目を迎えるロイック・デュバルと、今シーズンからS-GTにステップアップを果たすことになったルーキーの中山友貴(なかやま・ゆうき)。中嶋悟総監督が校長を務める鈴鹿レーシングスクール・フォーミュラ(SRS-F)の卒業生で、その後FCJ、全日本F3とフォーミュラで腕を磨いてきた弱冠21歳の若武者だ。       また、EPSON NSXのカラーリング だが、昨年と同様にカラーリングコンテストを実施し、多くの応募作品の中から最優秀賞に選ばれた、高田貴弘さんのデザインを採用。デザインテーマは『風』とのことで、EPSON NSXも、レースを颯爽と走りきるように、と気合が高まっている。
 昨今の経済状況に配慮して、09年シーズンのS-GTでは合同テストは、1回のみ。レースウィークも金曜日の走行がなくなり、土曜日に練習走行&公式予選、日曜日にフリー走行&決勝レース、と2デー開催にスリムアップされている。2ndドライバーの走行時間が減ることで、特に新人には厳しいシーズンとなりそうだが、オフのテストで精力的に走り込むことができたせいか、ルーキーの中山は“らしからぬ”落ち着いた態度でデビュー戦となる開幕ラウンドを迎えることになった。
 大会初日となった土曜日は好天に恵まれた。午前9時から2時間行われた練習走行では、先ずはロイックがマシンのセットアップを兼ねて走り始める。何度かピットインを繰り返しながらタイムを削っていったロイックが、1分26秒台前半まで詰めたところで今度は中山がコースイン。僅か8周の走行ながら27秒台に入れ、チームの信頼に応えて見せた。その後、再びロイックがステアリングを握り、予選用のセットを確認。ここでロイックは25秒台に入れ、まずまずの手応えを感じながら最初の走行セッションを終えることになった。
公式予選は午後1時15分から。40分間の混走と10分ずつの専有走行枠が設けられており、最初の40分間に、先ずは中山がコースイン。5周目に1分27秒612をマーク。楽々と通過基準タイムをクリアして見せた。中山と交代してピットアウトしていったロイックは、混走時間帯にマシンの状態を最終チェックした後ピットに戻り、専有走行時間帯を待った。そしていつものようにセッションもラスト7分となったところで勇躍ピットアウト。丁寧にタイヤを温めながら周回し、計測4周目に1分26秒台に入れるといよいよラストアタックに掛かった。セクター1では見事自己ベストを更新、25秒台中盤も見えるハイペースだったがセクター2で一気にスローダウン。そのままピットロードに向かいピットガレージにマシンを入れたロイック。実はサスペンショントラブルが発生していたのだ。これでラストアタックは幻となり、1分26秒421で予選11番手。今回、スーパーラップ進出は上位8台となっていたが、8番手のタイムは25秒791だったから、トラブルは残念だった。 それでも、これがレース中でなくてよかったと、とポジティブシンキングでスタッフはトラブル個所を修復。さらに翌日の決勝に向け、マシンのメンテナンスを精力的にこなすことになった。
 決勝が行われた日曜日は、朝から生憎の空模様となった。時折雨足が強くなることはあったが、天候は一日を通じて曇り時々雨。それでも、土曜の夜から降り始めた雨が濡らしたコースは、一日を通じてウェットコンディションで推移した。もちろんチームスタッフは用意万端、午前9時20分から30分間に渡って行われたフリー走行では、ウェットコンディション用にセットし直されたEPSON NSXが 水煙を上げて快走。フリー走行の後にはS-GTシリーズの名物となったサーキットサファリを盛り上げることになった。
 決勝レースは予定通り、午後2時にスタートした。スタート進行が始まる前には雨足が激しくなり、コースのウェットコンディションが、朝のフリー走行時に比べて酷くなったこともあって、通常のローリングスタートではなく安全が確認されるまでの数周に渡ってセーフティカー(SC)が先導するSCスタートとなった。そのSCは2周を終えたところでピットロードに向かい、これで事実上のレーススタート。SCが先導した周回もレース周回に含まれるから、実質的には80周のレースが始まった。
 スタートを担当したのはロイックだった。事実上のスタートとなった直後、3周目の1コーナーでは上位陣にハプニング。前車が巻き上げる水煙で視界を遮られ、他車と接触するアクシデントが発生したのだ。しかしロイックは冷静にこれを回避、2ポジションアップの9位で(事実上のオープニングラップとなった)3周目を終えることになる。5周目に、上位陣のコースアウトにより8位に進出したロイックは、その後はリチャード・ライアン選手を猛追する。ポールスタートながらタイヤ選択を誤ったか、ペースは伸びきっていなかったが、チャンピオン経験のあるベテランだけに、簡単にはパスできない。それでも数周を掛けてチャージし続けたロイックは16周目にはライアン選手をパスして7位に進出する。

その後、レースは少し膠着状態となるが、30周を過ぎた辺りから上位陣は、少し早めのルーティンピットを始めるようになった。だがこのタフなコンディションの中、自らのペースを保ってきたロイックは、その流れを途切れさせることのないように、ロングラップを引っ張ることになった。そして52周目には3位にまで進出すると、その周を終えたところでようやくピットに向かった。82周レースの3分の2近く、まさにレギュレーション(競技規則)一杯まで、ミスなく着実に、そして時としてアグレッシブなドライビングだった。
ピットインしてきたロイックから中山にドライバー交替。同時にガス補給も行ったが、タイヤは無交換のままEPSON NSXはピットアウトしていった。タイヤの状況を確認した チームスタッフは、後方から追い上げてくるマシンとのタイム差を考慮し、タイヤ無交換で82周を走り切るように急遽、作戦を変更したのだ。ドライバーがルーキー、という不安材料もあったが、ここまでのテストから、これで行けると判断しゴーが出された。
そのチームの信頼に応えるように、中山は見事なドライビングを展開した。前後のマシンとは、それぞれ20秒ずつほどのギャップがあったとは言うものの、国内最高峰レースのデビュー戦で6番手につけ、しかも酷いウェットコンディションの中、ロングラップを周回したタイヤでピットを出ていく…。まさにルーキーには試練の場となったが、中山は見事に期待に応えて見せた。アウトラップこそ慎重に1分47秒台で回ったものの、次の周からは40秒台から41秒台前半にラップを揃えてみせる。周回遅れをパスするのに手間取ったか、何度か43秒台に落とすこともあったが、61周目(自信のスティントでは8周目)には自己ベストとなる1分39秒910をマーク。まさにベストジョブを展開することになった。
そんな中山だが、やはり長い周回を走ったタイヤが厳しい状態になってしまい、終盤は立川祐路選手から猛チャージを受けることになる。前半のスティントでロイックがライアン選手をパスしていたが、後半スティントの立川選手はタイヤもベストフィットだったようで、トップグループに匹敵する好タイムをマークしながらで追い上げてきていた。

何とか踏ん張っていたルーキーの中山だったが、77周目の裏ストレートで2位のマシンにラップダウンされる際に立川選手にもパスされてしまった。ルーキーの脆さが垣間見られた瞬間だったが、そこまでの頑張りで、些細なミスは充分帳消し。その後も気落ちすることなく、レースの後半スティントをほぼ完璧にこなした中山は7位でチェッカーを受けた。
●EPSON NAKAJIMA RACING総監督 中嶋悟のコメント

先ずは開幕戦で7位入賞できたので、良しとしておきましょう。2人のドライバーも、良い仕事をしてくれました。特にルーキーの中山選手。後続のマシンとのタイム差からタイヤ無交換で行かせたのですが、そんな過酷な状況の中、充分に及第点の仕事をしてくれました。でも、土曜日の予選、そして日曜日の決勝、と予想を超えるコンディションの変化に対応し切れませんでしたね。それがチームの課題です。
※次戦は、4月18日〜19日、三重県鈴鹿サーキットで開催されます。