トップ > エンターテイメント > 伝説の一戦 > Vol.7 1989年 F1 第16(最終)戦 オーストラリアGP(アデレード市街地コース)

Legendary Races 伝説の一戦



カテゴリー:F1
サーキット:ADELAIDE
決勝日:1989年11月5日
トラック:ウェット
予選:23番手/決勝:4位

最終戦、中嶋は万全の態勢でレースに臨む

2日にわけて行なわれる予選。キャメルカラーの黄色いロータスでF1参戦3年目を迎えた中嶋は、この1年間の集大成ともいえる最終戦に万全の態勢で臨んだ。予選1日目を22番手、2日目を23番手で予選通過を果たす。決勝日朝のウォームアップでは全体の20番手タイムだったが、10番手から20番手までが0.5秒の間にひしめきあっており、レースでの混戦が予想された。

しかし、決勝前のウォームアップ走行が終わる頃から本降りの雨が降り始める。どのチームも雨天での走行データを持っていなかったため、急遽30分間の慣熟走行が設けられることとなった。雨での走りの定評のある中嶋はそこで全体の10番手タイムを叩き出す。

スターティンググリッドでスタートを待つ間も雨は激しくなるばかり。上位グリッドの選手が、「こんなコンディションではレースはできない」と言い出したようで、なにやら緊急の話し合いが行なわれているのかと前へ歩いていくと、なんとそこでスタート3分前の宣言が出される。あわててマシンに戻り準備をするも、フォーメーションラップ開始までに間に合わず、最後尾からのスタートを強いられることになってしまった。さらに不運は続き、1周目に前を走るマシン同士が接触し、避けようとするも行き場をなくしてしまいコースオフ。

なんとかレースを続けようとUターンを試みるもエンジンをストールさせてしまう。マシンから降りピットへ戻ろうとするとオフィシャルから「赤旗が提示されたからリスタートとなる」と聞かされる。1周目の赤旗はレースそのものがやり直しとなるため、グリッドへ戻れれば再びレースに出場することができるのだ。


降り続ける雨のなか、怒濤の追い上げ

オフィシャル数人に押し掛けしてもらい自ピットへ戻りフロントノーズを交換後、再度グリッドへ整列する。今度は本来のグリッド位置からのスタートとなったがスタートに失敗し1コーナーで単独スピンを喫する。今度はストールせず、コース上にとどまった中嶋。ここから彼の怒涛の追い上げが始まった。17周目までに6番手まで順位を上げた。そこで前を走るマシンを抜く際にストレートで猛烈な水煙を浴び、点火系が濡れたためミスファイアを起こしてしまう。しかしこの症状は自然に収まり、なんと28周目までには4位を走行していた。

その時点で3位を走るマシンとは50秒以上もの差があったが、1周ごとに約3秒縮める猛追を見せる中嶋。しかし3位のマシンと近づけば近づくほどマシンに当たる水煙も激しくなりミスファイアが再発してしまうトラブルに見舞われるも必死で追いかける。しかし、ついにあと4秒ほどまで追い詰めたところでチェッカーフラッグが振られた。自身最高位の4位であった。表彰台こそ逃したもののチームに初のポイントとなる3ポイントを獲得した。さらにこの大混戦の中脅威の追い上げを見せた中嶋は64周目に全体のファステストラップを記録したのだ。これは日本人初の大記録である。

激しく降り続ける雨のなか、果敢に攻める中嶋の走りに誰もが魅せられた。これも伝説の一戦だ。

中嶋悟コメント

本当に懐かしい思いです。このレースがあったから、今の自分があると言える重要なレースでした。1つのレースには多くの物語があり、これをきっかけに現在のカーナンバーである64という数字と縁ができました。さらには、皆様にも現在でも親しんでいただいている「雨のナカジマ」というフレーズが生まれた思い出深いレースの1つです。今後も、監督としてではありますが、こういうレースに立ち会っていくことが、密かな僕の願いです。



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