国内のフォーミュラレースとしては初めて、決勝レース中のタイヤ交換が義務付けられるようになり、またドライバーに高額の賞金が用意されるなど、様々な話題で注目を集めていた2000年の全日本選手権フォーミュラ・ニッポン(FN)のシーズン開幕戦が、昨年よりもほぼ半月早く3月25〜26日の鈴鹿ラウンド2&4レースとして開催された。
昨年の同シリーズでドライバー&チームのダブルタイトルに輝いた我がPIAA NAKAJIMA RACINGは、ドライバーを一新してシーズンに臨むこととなった。
そのフレッシュな顔ぶれを紹介しておくと、かつて我がチームでFNを戦い、98〜99年にはF1GPへと活動の場を移していた高木虎之介選手と、昨年まで我がチームから全日本F3に参戦していた松田次生選手。
この若いコンビで今シーズンを闘っていくことになった。チーム体制としてはこれまで通
り、中嶋悟総監督指揮のもとに、藤井一三・チームディレクターを初めとするチームスタッフが、2人のドライバーをサポートする。
ちなみに、高木選手はツインリンクもてぎで2KLをシェイクダウンしトップタイムをマークしていたし、若い松田選手も堂々6番手につけていたということもあって、チームとしての雰囲気は最高となったところで、今回の開幕戦を迎えることになった。
公式予選が行なわれる土曜日の、朝一番で行なわれた公式練習では高木選手がトップタイムをマーク、若い松田選手もコンマ6秒差の5番手につけるなど、好調な滑り出しを見せることになった。
ただし2人の間には昨年の最終戦で勝ったR.ファーマン選手や、今シーズンここまでの走行会などで好タイムを連発している金石勝智選手やM.クルム選手らが控えており、また松田選手の後方にも本山哲選手を筆頭に道上龍、立川祐路、脇阪寿一の各選手が続き、決して楽観が許される状況ではなかった。
午後2時20分から行なわれた第1回目の公式予選では高木選手が3番手、松田選手が6番手と、朝に比べると一歩後退した格好となったが、昨年と同様に45分間のセッションが2回行なわれる公式予選では、やはり勝負は2回目のラスト10分。
インターバルを使って、さらに好タイムをマークすべくスタッフ一丸となっての作業が続けられた。だが、その2回目のセッションでもファーマン選手とともにペースセッターを務めていた高木選手であったが、オーバーステアに苦しめられてしまい、最後のアタックも実らずタイムは1分45秒046に留まり、44秒台をマークしたファーマン選手と金石選手、そしてクルム選手に次ぐ予選4位
に沈んでしまった。
また高木選手にコンマ8秒差と、ルーキーらしからぬ速さを見せつけた松田選手だったが、その辺りが最も激戦区となり予選9番手。前後にはベテランがひしめき合う状況となっていた。
夜来の雨も早朝には上がり、青空が広がってきた中で決勝日を迎えた。今回の開幕戦は、2&4レースのネーミングからも分かるように、久々に全日本2輪ロードレース選手権との併催となり、観客動員数も3万5000人を数えることになった。
そんな大勢が詰め掛けた中、朝一番のフリー走行で2人の選手は、まずまずの手応えを感じていたようだった。そして、相変わらずの盛況振りを見せたピットウォークと2輪/スーパーバイクの決勝を終えると、いよいよFNの決勝レースとなる。
西コースの方を見やると、黒い雲が少しずつ大きくなっていたのが気になったが、まずは全車がスリックタイヤでスタートすることになった。
好ダッシュを見せたのは2列目の2人で、クルム選手、高木選手の順にフロントローの2人の間を縫うようにしてトップ2を形成する。
これをファーマン、金石、本山、道上の各選手が追いかける展開となったが、各車一進一退の展開で周回を重ねていった。
3周目辺りから西コースのほうでは雨がパラつき始めたが、展開が大きく動くことになったのは5周目のこと。3番手で130Rを立ち上がっていったファーマン選手が、強さを増してきた雨に足をすくわれる格好でクラッシュしたのだ。
ただちにセーフティカーがコースインするが、これを機に上位陣はほぼ全車がピットイン、タイヤ交換を行なうことになった。
クルム選手に続いてピットインしてきた高木選手のマシンを、チームスタッフが取り囲んで素早くタイヤチェンジ。
クルム選手よりも先にピットアウトさせることに成功した。これで高木選手は事実上のトップとなったが、その高木選手も8周目の同じポイントでコースオフ。
再スタートしたものの15番手まで後退してしまった。
ところが、コース上の各所でスピンが相次いだために、10周を修了した時点で赤旗中断、レースは仕切りなおしとなった。
相変わらず西コースの上空は曇っていたものの、8番手からスタートする高木選手はスリックを装着、一方、それまで着実に走った松田選手は4番手から、大事をとってインターミディエイトで、第2パートに臨むことになった。
このタイヤ選択は、結果的に高木選手にとって大正解となった。グリッド上位
にいた数台がインターミディエイトからスリックに交換する隙を突いて、再スタート後3周目には、早くも2番手まで進出した高木選手は、なおも猛チャージを掛けてクルム選手に迫る。
1分48秒台前半から47秒台後半で逃げるクルム選手に対して、高木選手は47秒台でコンスタントに周回を重ね、1ラップごとにじわじわと迫っていく。
そして1ラップほどテール・ツー・ノーズの戦いを繰り広げた後、残り1周余りとなったシケインでインに攻め込んだ高木選手は、クルム選手を一気にパス。勢いを持続したまま残り1周を快走。国内復帰第1戦を見事な逆転優勝で飾った。
一方、松田選手は、再スタートから3周後にピットインし、スリックに交換。レース序盤からトラブルを抱えていた為ペースを上げることができなかったが、ピットアウト後は着実な走りを見せ、11位
完走を果たしている。
高木選手の逆転優勝、松田選手の着実な走り、そしてタイヤ交換で見せたチームスタッフの的確かつ素早い仕事。
開幕戦からPIAA NAKAJIMA RACINGは、高いポテンシャルを発揮することが出来た。 |